第22回 年越し蕎麦──大晦日癒す滋養食
粗食のすすめ
「粗食のすすめ」シリーズ(幕内秀夫著)が、売れに売れている。「日本の風土に合った伝統食を食べよう」「主食は、ごはん、もち、うどん、そばなどの“ひらがな食品”にしよう」などの提言を柱にして、ご飯中心の日常食レシピを紹介した本のシリーズである。
私も何冊か読んだが、これぞ妊娠、授乳期の女性の必読書であると確信した。そこで、ママ・チョイスが来年三月に刊行する予定の「わたしのお産新訂版」の中で、幕内さんのお話を紹介するため、取材に伺った。
「昔の人だって、朝からおひたしや煮物を作ったりはしなかった。家電製品はない、子どもは十人…、できるわけないでしょ。ご飯と味噌汁、それに漬物などの常備食を食卓に並べる、これが食事の基本。簡単なことです」と、幕内さんは言う。
お宅を辞して、中央線の豊田駅から電車に乗った。緑多い風景が徐々に住宅やビルに変わり、大規模な開発風景も現れる車窓を眺めながら、今年一年のことに思いをはせた。
どうして戦争が絶えないの?
ちょうど一年前に、うどんカフェをオープンし、無我夢中で日が過ぎた。少し気持ちの余裕ができた頃、「日本でも狂牛病」の報道にどきっとした。ヨーロッパから肉骨粉を輸入して牛に共食いさせ、食肉や搾乳の効率を上げていたなんて、信じられない話だった。
続いてアメリカで前代未門のテロが起き、報復という名目で戦争が始まった。人類は数え切れないほど同じことを繰り返してきた。世界中の国々が、それぞれの民族の意志と生活を尊重しながら、助け合うことはできないのだろうか。
私たちは、この世界でどんな場所にいるのだろう。よその国の食材を安く買いたたき、その国の経済や環境を翻弄させていないだろうか。私たちの便利な生活が地球温暖化を進め、貧しい国々の干ばつに拍車をかけているかもしれない。
もし、食糧の輸出をストップするぞと脅されたら、不本意でもその国に従属するしかないのかな。国と国との関係は、日常の子ども同士、隣人同士の関係のように単純に語り合えないのが悲しい。
こうも思う。もし、世界中の人々が、それぞれの土地で採れる季節の恵みをほどほどにいただくという、当たり前の生活の大切さが身にしみていたら、無用のおせっかいや欲得で、よその国をかき回すようなことは思いつかないんじゃないかな。
食の知恵には深い意味が
店に戻り、「年越し蕎麦予約受付中」の札を作った。年末に蕎麦を食べる習慣は、江戸時代半ばにはすでにあったという。「細く長く」で長寿を願う、蕎麦は切れやすいので、その年の厄払いになる、ソバという植物は強くて枯れにくいことにあやかるなど、諸説ある。
「昔の人の経験から生まれた食の知恵には、深い意味があるものが多い」と、幕内秀夫さんに聞いた。蕎麦は、冬の寒い日、大掃除に疲れた体にぴったりの滋養食なのかもしれない。
大晦日には、来店されるお客さんと、この欄を読んでくださったみなさんに感謝しつつ、心をこめて蕎麦を出そう。
幕内秀夫さんのフーズアンドヘルス研究所
http://www8.ocn.ne.jp/~f-and-h/
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